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こひちろうの独り言


マネージャーの独り言を綴ってみたりします。
by forumhiroshima
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イカの海

ずっと以前の夏、日本海海岸の民宿に夕刻、予定時間を過ぎてとうちゃくした。宿のお母さんがえらく無愛想で、ここまで公衆電話も見当たらず遅れる連絡も入れられなかったことが原因かと。


熱気のこもった二階の小部屋の窓をあけると、下の空地はイカが干されて、ヒラヒラしていた。お母さんが上がってきて、てんこ盛りの一夜干しのするめを短冊に切って醤油がかかった一皿に、これもてんこ盛りの丼ご飯がお盆にあって、夕食だ、と言われた。ビールを頼むと、返事がない一瞬がながれて、息子が船でケガして、病院にいくから、とことわられた。すぐに宿賃を用意して、ビール代金をたずねると、いきなり、冷蔵庫にある、!。

留守に客を置いておく不安と息子の容態の不安が彼女を混乱させ、遅れてきた客へのいきどおりもあったのだろう。

イカの海_d0089494_10015572.jpg

風呂に水を張ってあるから、沸かしてはいれ、と言い残して飛び出していった。風呂を焚きつけて、ぬるく沸かして、飯はむすびにして、風呂上りに畳の上のお盆の前に座った。冷蔵庫にあった漬物に冷えたビール、柔らかいするめ、いや 少し風があぶったイカ刺し、がまたうまかった。リラックス、リラックスで、もう我が家気分。食い足りない分は空地のヒラヒラをとってきて、勝手な追加をして、翌朝話すと、サービス!。息子さんもかえってきていた。


鳥取・境港の出身のノンヒィクション作家・足立倫行の「日本海のイカ」はイカ漁を十一回漁船に船員として乗り込んで書かれている。

夏の日本海の漁火は水平線に浮かぶ。水平線までの距離はたかだか45kmだそうだ。

「西日本近海から東シナ海にかけての広い海域で生まれたスルメイカは、水温の上昇とともに対馬海流に乗って北上し、北海道沖からサハリン沖(一部は黒潮にのって太平洋)へ向かう。グループごとに時期をずらして北の海に到達すると、今度は反転して産卵のために南下を開始する。成長のためのエサ取りの北上、産卵のための南下、このことで沖合の潮境や離島周辺にいくつもの漁場が形成される。 日本海のイカ」


対馬周辺と隠岐周辺が北上するイカの最大の漁場で、南下は本土よりのコースをとるため、夏には海岸からイカ釣りの漁火がみられる。イカの反転と、サンマ漁の始まりが、季語の「初汐」なのだろう。毎朝に海藻を海岸から引き揚げ、神への奉納とすることは、海へ伸ばした手のひらが感じる海温や海藻の鮮度の手触り、引き揚げた海藻の種類で感じること、かもしれない。海人たちの海の変化への気遣いを感じる。


「古代の出雲びとの意識の奥には、隠岐の島の存在がかくされている。千酌から隠岐へは通い船がいたことは出雲国風土記にもみえているが、隠岐は沖であり、また身を隠すところでもある。   谷川健一 出雲の神々」


“河船の もそろもそろに 国来・クニコ、国来・クニコと引きすえ 縫える国は、”と国引きを歌ったヤツカミヅオミヅノ命を祭る神社、富神社や長浜神社などに海藻が供えられることを、出雲人がずっと昔、地球規模の温暖化による海進で離れてしまった国々への記憶の確認のようにも思う。

「クニコ、クニコ」、離別した恋人への叫びにかんじるのは、演歌すぎようか、クニコ!。


海の季節の冬への移ろいを「出雲は、“お忌み荒れ”といいならわしてきている。この烈風吹き荒ぶことを、サダンサン風、サダンサン荒れ(佐太様)とも呼んでいる。対馬海流に運ばれてきた南方産のセグロウミヘビが岸に打ち上げられる。そのヘビを玉藻・ホンダワラの上にのせ、神におさめる。 谷川健一」


千酌の海岸の四角な小屋ほどの巨石が座って、そばに爾佐神社(出雲風土記社)が海の正面真東の円錐形の麻仁曾山と対峙している。ここに都久豆美命が祀られる。クツズミじゃない、ツクツミからチクミという地名が発生ともいえなくはない。が、「沖縄言葉がわかりにくいのは、母音のエとオがかけてしまって、星をフシ、馬をンマ、夏をナチ、月をチチといったりする。街道をゆく 6」この祭神・ツクツミの「ツク」は月のことだといわれる。チチクミがチクミに。月が黒潮に乗って沖縄からやってきたような。隠岐の島も対馬海流に囲まれている。

イカの海_d0089494_10015279.jpg

隠岐の島からの船が月夜千酌湾へ入ってくる。船は登ってきた月と麻仁曾山を合わせた方向に船首を向けて、右岸の月明りに照らされた鳥居へむけて、船首をターンする。・・・・。

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千酌から北上すると野井の集落にでるが、そこに風土記では「戌・マモリ」沿岸警備施設があったと記述している。弥佐加志能為神社そばに巨石があり、後の世に、隠岐に流された後醍醐天皇

が島を脱出した際にここに接岸した伝承があつたりする。メインの港、千酌をさけたのだろうか、それとも兵舎へなぐりこんだか?


西へむかうと野波の集落へ入る。整備された二車線の車道は「まっすぐな 道で さみしい 山頭火」がぴったり。集落にも山影にも、かかえきれない時間の思い出がうずくまっているだろうが、車道はただただ急がせる。


それでも走ることが、喜びになる道が現れる。野波の集落から峠越えにはいるとすぐに、チェリーロードの標識のある分岐にであう。きっと旧県道の道が、桜の並木で整備されていたのをリメイクして売り込みを図っている。その姿勢、買った!。

新しく隣の町との連絡道ができると、桜でかざられる時代があったようで、道幅の拡張はのがれたが、どこも静かな、車の往来も少ない「桜が散って さみしいが 車こなくてうれしい コヒチ」。すぐに新しいトンネルのある道に合流する。トオンネルを避ける旧道がない道は新しいはず。集落の連絡は船でしかなかったのだろう、か、海岸の波打ちぎわと高みをはい登る道なのか、そのころを想像する。日本海海岸で岬に遊歩道がたくさん整備されているが、集落の連絡道でなかったか、とおもっている。


加賀の潜戸のある瀬戸の鼻に灯台があり、そこへメンテナンスの道が伸びている。ここで生まれた佐太の大神が鎮座した佐太神社のある朝日山の尾根が見える。屏風のように横長な、当て山でもなさそうな山に鎮座させようとした古代の人々の思いには近づけなかった。

イカの海_d0089494_10021285.jpg


by forumhiroshima | 2016-08-05 10:10
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