中国山地の谷間の集落にも、瀬戸内の島でも、以前あった小さな豆腐屋が消えていっている。
薪をたく煙がエントツから白くのぼってる豆腐屋のある景色は、豊かな気分にさせてくれていた。
しまなみ海道ができて、すこしおおきな集落ごとにあった豆腐屋も、閉まってしまうのを見る。その中で、大きくなった豆腐屋がある。大三島の盛の集落にそれがある。
盛の集落は本土の忠海からのフェリーが入る港をもっていて、集落の佇まいも変わらない。そこの集落の路地に豆腐屋があった。多々羅大橋から、盛へはみかんの畑の中を走る古道が延びていて、広くてなだらかな斜面に広がるみかん畑の向こうの海を見ると、背筋がグーンと伸びるようで、きて、よかった!といつも思わせてくれる。
盛の古道と港への道の交差点から、すぐの場所にあった豆腐屋がなくなっていた。交差点にある食料品店はAコープと西原商店とある。どちらもここの豆腐がおいてある。ビールも売ってる西原商店のおばあさんは、すこしとぼけた受け答えで、缶ビールの賞味期限があることも知らないし、たばこのキャビンとラークの区別をつけない。でも、笑顔でごまかされる。以前ここで地元の吉野豆腐店の豆腐をおしえてもらった。おいしいから買いなさい!と押し売りだったけど、うまい豆腐で、感謝している。

豆腐屋がナイと訪ねると、移転して小学校横へ移転したという。集落の佇まいは昔とかわらないが、子供たちは少なくなったようで、ここの盛小学校も廃校になっている。吉野豆腐店は、学校のある海岸道路そばにちいさな工場になっていて、「昔の雰囲気が良かった」と、ご発展にイヤミな気分をもってしまった。
西原商店に帰って、豆腐のあるケースをみると、一個だけ。そーっとひっくり返すと、やっぱり、期限切れ。でも一日だけだからと求めて、古道の側の池のほとりで、ほおばった。やっぱり、おいしい。

写真の豆腐は、お土産にAコープで購入しました。朝20個はあったのですが、夕刻には5個でした。その側に石見産豆腐がお安くあったのですが、へってません。遠いところからくるのに、安い??ですよね。